Contents
相場は予想できるのか?
そもそも、相場とは予想できるものなのでしょうか?
もし相場が予想できるのならば、それは一度習得すれば永遠に使える錬金術的な技術なのでしょうか?
錬金術はエネルギー保存の法則に反するので、マーケット(実在)で錬金術を行うことは不可能なのではないでしょうか?
ほとんどの人は、当たり前のように、相場はある程度ならば予想できることを前提にしています。
相場が予想できる前提で、株やFXをしたり、その他の投資対象を購入しているはずです。
すなわち、値上がりするという予想をして購入しているのです。もしくは、値下がりすると予想して、空売りをしています。
そもそも、相場に法則性がなければ予想は不可能なはずです。相場に法則性はあるのでしょうか?
そして、相場になんらかの法則性があって、その法則がどの程度、いつまで続くのかも予想できなければ、やはり錬金術にはならないはずです。
また、錬金術を行える人がマーケットに一定数以上いれば、そのマーケットは崩壊するはずです。少なくとも、その錬金術を使える人間が少しずつでも増えて行けば、いずれ必ずマーケットは崩壊します。
僕は言葉遊びをするつもりはなく、パラドックスを弄してこの文章を読んでくれている方をけむに巻くつもりもありません。
投資家を目指すならば、「そもそも相場とは予想できるものなのかどうか。予想できるのならば、予想していくらでも儲けることが出来るのかどうか。」ということを、基礎知識として知っておかなければならいと、僕は思っているだけです。
相場の仕組み
マーケットは本来、売りたい人と買いたい人がお互いにその相手を探しているだけの、アナログ的な場です。
その時点で売買契約が結ばれる地点がその時の価格です。
ただ、現代では売買の過程の全てがデジタル化し、さらにその流動性が人の感覚では把握できないくらい高いので、あたかも人同士のやり取りではないように感じられてしまいます。
マーケットである金融商品が値上がりするのは、その金融商品の人気が上がり、その金融商品を欲しいという人が増えているのです。
これは、株やFX、仮想通貨などを端末に向かってデータのみの分析で売り買いしていると忘れてしまいがちになることですが、忘れてはならない重要な事実です。
つまり、マーケットで金融商品の価格を予想することは、マーケット参加者の心理を予想することになります。
また、一人の人の心を予想するだけではなく、人が多く集まった時の集団心理も予想する必要があります。むしろ、そちらの予想の方がマーケットの相場に直結するかもしれません。
なので、相場が予想できるかどうかは、人の心理、及び人々が集まった時の集団心理が予想できるかどうか、だと言い換えることできます。
こう考えれば、少なくとも部分的には、マーケットの相場は読める可能性があるように感じます。
ですが、あくまで可能性があるだけです。
もし自分が他の人の心理を読める可能性があるならば、他の人もあなたの心理を読める可能性があるわけです。つまり出し抜かれる可能性があります。
あなたは、株や仮想通貨などを買って損をしてしまったことはありませんか?
相場で損をした場合、その人は「時期が悪かった」とか「運が悪かった」、「分析が甘かった」などと思うかもしれません。
ですが、上記の考え方に基づくと(僕は上記の考え方は間違っていないと思っています。)、あなたが損をしたのは、誰か別の投資家に出し抜かれただけです。
マーケットで損をしたら、あなたの資金が他の人に奪われたと考えられます。
投資のゼロサム部分とノンゼロサム部分
マーケットで損をした場合、それは他のマーケット参加者に資金を奪われたと考えられます。
ただ、それが全てではありません。
マーケットの相場で奪い合いの部分(ゼロサム部分)では、あなたは資産を奪われたと言えます。
しかし、マーケットの中の奪い合いとは別の全体の成長の部分(ノンゼロサム部分)では、その限りではありません。
マーケットのノンゼロサム部分の収支では、他の投資家の影響を受けずに、マーケットから利益を上げられる可能性があります。
たとえ周りの投資家たちが老獪・狡猾あっても、とても注目を集めている成長中のマーケットで投資を行うならば、つたない一般の投資家が利益を得られる可能性があるのではないでしょうか。
例え他の老獪な投資家たちに投資した資金の一部を奪われたとしても、その市場全体の成長が他人に奪われた分を上回れば、一般の投資家でも利益を上げることができます。
マーケットの相場は、人間同士のやり取りで決まっているゼロサム部分と、そのマーケット(もしくは商品)全体の成長で決まるノンゼロサム部分があります。
他の老獪な投資家(現状では機関投資家)と争うことになってしまうゼロサム部分への投資をなるべく避け、マーケットやその商品などの全体の成長に当たるノンゼロサム部分に投資していけば、一般の投資家でも利益を上げられる可能性があります。
すなわち、ノンゼロサム部分ならば利益を上げられる=相場が読める、という結論になります。
人の心を予想する?
投資の場では、よく「投資家心理を予想する」というような言い回しを使います。
マーケットで他の投資家の心理(売り買い状況)を予想できるかというと、他の投資家の心理を予想することは原理的にはできますが、現実的には不可能です。
不可能かどうかというより、不可能だと思っておいた方が良い結果になると思われます。
理由は先ほど少し説明したように、マーケットには必ずあなたよりも老獪・狡猾な投資家がいるからです。
あなたよりも経験豊富で、あなたよりも多くの資金が運用できて、あなたよりもテクニカルもファンダメンタルズも上回る投資家が、あなたが買おうと思った金融商品を先回りして買っている可能性があります。
そして、あなたがその商品を買うと同時に、彼らはその商品を売るかもしれません。
そうすれば、彼らは自分の買った値段より高い値段でその商品を売れることになりますし、あなたから見れば、買った途端にその商品の価格が下がることになります。
あなたはその老獪な投資家に資金を奪われたことになります。
老獪な投資家(≒機関投資家)には絶対に勝てないと認識すべきです。
なぜならば、資金があるからです。
投資するための資金が潤沢にあるということは、その一部を使って一流の投資の専門家を雇えばいいわけですし、その一部を使って情報網を張り巡らし、最速でファンダメンタルズを手に入れればいいわけです。
そこで成功した場合は、それによってさらに資金が集まることになります。
お金を得るためにお金を使って、得たお金を使ってさらにお金を得る。
資本主義社会の原理です。
相場とゲーム理論
ゼロサムやノンゼロサムというのは、ゲーム理論の用語です。
ゲーム理論では有名な「囚人のジレンマ」のように、プレーヤー間で起こる現象を数学的に説明がすることが可能です。
なので、ゲーム理論を学べば「ゼロサムゲームを制する=マーケットのゼロサム部分から利益が得られる」と思えてしまうかもしれませんが、これは間違っています。
ゲーム理論ではプレーヤー自身がゲーム理論を駆使する仮定にはなっていません。
なので、マーケットにそのまま当てはめることは不可能です。
そして、ゲーム理論がマーケットに有効であるとすると、この場合でも資金が潤沢なプレーヤーの方が、優れたゲーム理論を適用してしまう可能性があるので、やはり方向性が危険であることには変わりません。
どちらにせよ、ゲーム理論を適用してマーケットのゼロサム部分(他者との奪い合いの部分)で利益を得ることは不可能だと思っておくべきです。
短期の相場の変動はゼロサム・長期での価値への収束はノンゼロサム
短期的な価格の変動は、ほぼ全てゼロサム的な価格の変動です。そう考えておくべきです。
なぜならば、投資対象の価格は数%~数10%くらいなら短期間で変動する場合がありますが、投資対象の実際の価値が短期間に数%も変わることはないからです。
実際にメーカーの商品やサービスがヒットして、ヒット前後で(短期間で)そのメーカーの「価値が上がった」と感じられる場合があるかもしれません。
ですが、そのヒットした商品やサービスは、優良なメーカーだからこそ開発されたものです。
それを開発するための情報・資金・人材など、全てが揃っていたメーカーだったわけです。そのメーカーは、ヒット商品を開発する前から優良メーカーだったはずです。
そのヒットがあったから、優良メーカーであったことが世間に知らしめられただけです。ヒット商品が出たから、そのメーカーが優良になったわけではないです。
つまり、ヒット商品が出たことはファンダメンタルズの一つです。
そして、先ほど説明した通り、ファンダメンタルズで動く相場はセロサム的です。
その情報を知っていた者のみが利益を得ます。その情報を得る競争で老獪な投資家たちを出し抜くことは不可能に近いです。
このように、短期的に相場が大きく変動する場合は、それらはもれなくゼロサムの状態にあります。
「長期的な相場がノンゼロサムだ」というよりは、「短期的な相場はもれなくゼロサムなので、その残りの長期的な相場にしかノンゼロサム部分は残っていない」という後ろ向きな理由で、長期相場→ノンゼロサムともなります。
ゲーム理論でのノンゼロサムの意味は、ゼロサムプレーヤーの影響を受けずに利益を得られる状態を指します。
ゲーム理論で言うと「しっぺ返し」の戦略になります。
人から奪おうとする者を上手く排除し、協力できる者同士でお互いの利益を高める状態です。
このようなノンゼロサム状態はどこに存在するかというと、現代社会の人々の実生活そのものです。
人々はお金を媒介にして、自分一人では絶対に生産できない価値をお互いに提供し合っています。提供し合って協力した結果として、豊かな生活をおくることができます。
現代社会の人々の生活が実際に豊かになって行く過程がノンゼロサム状態です。その過程に即した(リンクした)投資ができれば、それはノンゼロサムへの投資と言えます。
人々の生活は一足飛びにいきなり豊かにはなりません。長期的に見て少しずつ豊かになります。
なので、ノンゼロサムへの投資は長期的な投資になります。
まとめ・相場は予想できるのか?
相場は原理的(理論的)には予想し得ますが、まずは、現実的には予想できないと思うべきでしょう。
特に短期の相場の予想は、老獪な機関投資家たちとの資金の奪い合いになるので、必ず負けると認識すべきです。
人々の暮らしが実際に良くなるような変革はノンゼロサムなものなので、そういった状態への投資は、ゼロサムの影響を受けません。なのでその投資は成功する可能性があります。
相場を予想すること=投資することでは、予想可能な相場(ノンゼロサム状態の相場)と現実的に予想不可能な相場(ゼロサム状態の相場)を見分けることが重要になります。
以下は追記になります
カーブフィッティング
カーブフィッティングという概念は、資金の奪い合い=ゼロサム状態を見分ける場合に有効になる概念です。
詳細はいずれ当サイトでまとめますが、簡単に言えば「結果論を持って相場を予想したつもりになっている」状態です。
相場を予想するためには、結果論を排除する必要があります。
すなわち、本物の理論と、偽物の理論である結果論をしっかり区別する基準が必要になります。
自分の心理を知る必要もある
ノンゼロサム的な長期の投資を行うには、投資家は自分自身の心理を正確に知る必要があります。
なぜならば、投資家は本人もマーケットを構成するプレーヤーの一人だからです。
マーケットの相場が、そのマーケットに参加する投資家の市場心理で決まるのならば、逆に投資家の一人である自分自身は、マーケットから心理的な影響を強く受けるということです。
マーケットから受ける心理的な影響を受けないようにするか、それに打ち勝てるようにしなければ、たとえ投資の本質を捉えることができた場合でも、その本質に従った投資が不可能になります。
コメントを残す